月弓ノート ~10歳からのリベラルアーツ~

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ペンの力 | 自由な言葉を守る歴史とインクの科学

1000年前の文字が今でも消えずに読めるのはどうして?
「検閲(けんえつ)」って何? 戦争中、手紙や本はどう扱われていたの?
自由に意見が言える社会は、当たり前のことなの?

「月は『ペンは剣よりも強し』って言葉、知ってる?」
「知ってるで。でもちょっと納得いかん。ペンで戦っても秒で折れるし。なんか結局、勉強しろって言いたいんやろ」
「ちょっと違うけどね。ま、母は月より強し、ってことかな~。」
(あれ、月が逃げた、、、)

1935年、戦争の影が忍び寄る日本で、島崎藤村を初代会長として「日本ペンクラブ」が設立されました。しかし、言論統制が次第に強まるなかで、その活動は思うように続けられなくなっていきます。
戦後、志賀直哉を会長に再出発したペンクラブは、「平和」と「表現の自由」を守ることを理念に掲げました。現在の会長である桐野夏生さんも、小説『日没』で、自由が奪われていく恐怖を描き、社会の空気に警鐘を鳴らしています。ペンクラブは今も、言葉の力で平和を守るための活動を続けています。

では、物理的に「消えない言葉」とは何でしょうか。その秘密の一つは「化学」にあります。
書道などで使われる墨(すみ)に含まれる**「炭素(カーボン)」**は、ダイヤモンドの親戚のような物質で、光によって分解されにくい、とても安定した性質を持っています。紫外線で色あせてしまう現代のカラーペンとは違い、炭素で書かれた文字は、何百年もの時間を経ても消えずに残り続けるのです。
けれど、どんなに強いインクで書かれていても、人の手によって「意味を消されてしまった言葉」があります。それが「検閲」です。
1930年代から40年代、戦争中の日本では、政府に都合の悪い意見や表現は黒く塗りつぶされ、作家たちは自由に作品を発表することができませんでした。
しかし戦後、私たちは「二度と言葉を奪わせない」という決意のもと、日本国憲法第21条に「表現の自由」を明記し、それを守る社会を築いてきました。
今、私たちはSNSを通して、世界中に一瞬で言葉を届けることができます。一方で、「言葉の暴力」や「フェイクニュース」といった、新しい問題も生まれています。
自由には、必ず責任が伴います。物理的に消えにくいインクとして炭素を選ぶように、心に残り、未来に届く言葉を選び取る力が、今の私たちには求められています。
インクの化学反応から、暗号の仕組み、そして平和を守ろうとしてきた歴史まで。
「書く」という行為の奥深さを探究し、未来へ届く言葉の力を、私たち自身の手で育てていきましょう。

やってみよう
●ワーク1 未来に残るインク実験(色あせ実験)
黒い墨汁(または筆ペン)と、水性カラーペンを用意します。画用紙に同じ絵を描き、半分をアルミホイルで隠して、日当たりの良い窓辺に1週間置きます。
紫外線によって、染料インク(カラーペン)は色が薄くなりますが、炭素(墨)はどうなるでしょうか? 化学的な「強さ」を目で見て確かめてみましょう。

●ワーク2 シーザー暗号を作ろう
ローマの英雄シーザーが使った暗号です。「文字を3つずらす」などのルールを決めます(例:あ→え、い→お)。
「じゆう」を暗号化するとどうなりますか? 逆に、友達から受け取った暗号を解読するには、どんな「鍵(ルール)」が必要でしょうか。情報を守るための算数的なロジックを体験します。

●ワーク3 匿名(とくめい)SNSについて考える
「ネットでの書き込みは、すべて本名にするべきか?」というテーマで、自分の中の賛成・反対意見を戦わせてみましょう。
「本名なら悪口が減る(責任感)」という意見と、「匿名なら悩み相談がしやすい(自由)」という意見。どちらも一理あります。あなたなら、どちらの立場を支持しますか?

上記は、息子と私の家庭学習用に作成している教材の抜粋となります。
【教材内容】 20251221ペンの力
• 日本ペンクラブの歴史(戦前・戦後の変化)
• 墨(炭素)の化学的安定性と色あせ実験
• シーザー暗号の仕組みと26で割ったあまり(mod26)の計算
• 表現の自由と民主主義、知る権利
• 言語による思考の違い(翻訳の奥深さ)
• 芸術における抵抗の表現(ゲルニカ等)
• 作文『沈黙を破る言葉の力』
• SNSでの匿名発信に関するディベート